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 ドクターヘリ運航には、フライトドクター・フライトナース・操縦士・整備士の他にもうひとつCSという職域があります。現在全国12カ所のドクターヘリ運航はどこもこのメンバー構成で運航しております。今回はその中であまり知られていないCSという仕事について紹介させていただきます。

 CSとは、コミュニケーション・スペシャリスト(Communication Specialist)の略で“通信の専門家”の訳。ドクターヘリの飛行に係る調整・管理と医療情報の収集・伝達などを行います。消防又は医療機関からのドクターヘリ要請を受ける窓口になるのはこのCSです。イメージ的には航空機の管制を行う管制官や消防機関の119番指令などが分りやすいかもしれません。
 勤務場所は、ヘリコプターが駐機している佐久総合病院内にある“ドクターヘリ通信センター”。管制搭(コントロールタワー)や消防指令室と同様に無線機、電話などの複数の通信機器がたくさん設置されている部屋です(写真)。仕事上必要な資格は航空無線免許で有資格者1人で担当しています。現在は2〜3名のCSが1週間交替にて365日出張勤務し、年間出張日数は180日前後でホテルに宿泊しています。

 業務内容は、消防・医療機関からのヘリ要請を受け出動指示、患者情報の聴取、伝達、飛行に係る調整などを行います。ドクターヘリが今どこにいて何をしているのかなどを常時把握しており、安全かつ効率良く出動が遂行できるように、地上から支援することを目的としています。
 要請ホットライン(ヘリ要請専用電話)の緊迫感迫る音が鳴ると、ドキっとするとともに、一気に緊張感は高まります。要請からの約5分間は処理量が多く、その中で2本の電話が同時に鳴りさらに無線も入ることもあるなど瞬発力が要求されます。1人では一杯一杯になることもあるなど、緊急対応なので出動形態はさまざまで、経験を積んだCSでもドキドキすることもしばしばです。そういった意味ではいつも新鮮で緊張感の多いやりがいのある仕事です。
 CSは医療従事者ではないため、医療の専門知識は佐久総合院の医療スタッフの方々から少しずつ指導していただいております。
 CSは職業上、長野県すべての市町村名と地図上の位置だけは把握しています(ちょっと自慢です)。実際の風景はイメージでしかないのが悲しいところですが、それはテレビでどの市町村が流れてもわかるため、そのイメージを実際の風景に変換できます。これはちょっと楽しいことです。
 ドクターヘリの運航は校庭やグランド、空地などさまざまの場所に着陸することもあり、消防機関をはじめ多くの機関、地域住民の皆様のご理解ご協力があってこそ安全運航が成り立つ事業であると、地上から運航全般に携わるCSとして実感しています。これからも長野県民の皆様の安全、安心な暮らしを守るためにドクターへりは運航していきます。ヘリコプターの音が聞こえたときには大空を見上げていただき白いドクターヘリの機体にあたたかいまなざしをいただけることを願っております。



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