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前編からの続き> 〜5月某日〜14:30
 再度鳴り響く「ドクターヘリエンジンスタート…」のコール。
14:33
 ドクターヘリ離陸。通信センターより患者情報が入る「25歳男性。右前腕部をガラスに突っ込み出血が止まらない」。丸子に向け出動。
 本日3回目のシミュレーション!点滴ライン・薬剤・止血帯などの準備開始。本日3回目の出動!
14:42
 ランデブーポイント到着。
14:43
 救急車内の患者さんと接触。JCS0。受傷しているのは左前腕だった。
 すでに、止血のための駆血処置がされていた。受傷時の情報を聴き、処置はそのままで搬送することにした。点滴ラインを確保し搬送へ。
【受傷の原因】
店内に荷物を搬入中、強い風が吹き、ガラス戸が閉まってきた。それを止めようとし、左手を出したところガラスが割れ受傷したという。
 現場から奥さんに連絡。現状と今後について説明をし、佐久総合病院に向かってもらうことにした。
14:53
 ドクターヘリ内に傷病者を搬入。
14:55
 佐久総合病院に向け離陸。左手は止血されており、動き、感覚ともしっかりしていた。
15:03
 佐久総合病院救急外来到着。引継ぎ…駆血帯を外すと活動性に再出血した。記録・事務処理・物品補充を行いミッション終了、ICU業務に戻る。「さすがに今日はこれで終わりかな」と思っていた。
16:49
 本日4回目のスタートコールが鳴り響いた・・。16:30を過ぎると出動先がどこなのかが非常に気になる。場所によっては日没時間に間に合わず、医師と看護師の現場投入のみという恐れもあるからだ。
【解説】
信州ドクターヘリの離陸可能時刻はその日の日没時間までと決まっている。「現場投入」とは、(日没ギリギリの場合)医師と看護師のみを現場に残し、ドクターヘリは日没時間までに離陸し佐久総合病院に帰還してしまうという出動形態だ。その場合は、救急車で患者さんを医療機関まで搬送し、ミッション終了後は、公共交通機関などを使い病院まで帰還しなければならない。地域によっては数時間かかるか、もしくは帰って来られないこともありえるだろう。また、救急現場付近の天候が悪い場合は、これより先現場近くには行けないと機長が判断した場合は、行けるところまでドクターヘリで行き、そこで医師と看護師を降ろし、その後は医師・看護師が救急車などに乗り換え現場に向かい活動する。搬送に関しては現場で検討し決定する。(救急車搬送かドクターヘリまで患者さんと共に戻って来てヘリ搬送するかなど)・・。
16:52
 ドクターヘリ離陸。通信センターより患者情報が入る。「左手、親指以外の4指を切断」。南牧村に向け出動。本日四回目のシミュレーション!点滴ライン・薬剤などの準備開始。本日4回目の出動。気持ちを引き締める。
17:05
 ランデブーポイント到着。牧草がかなり生い茂っている。現場に向け走るが牧草に足をとられなかなか進まない・・。
 何とか牧草地を抜け出すと、牛舎の前に仁王立ちの患者さん。救急車に移ることも拒否していた。理由は中国の方で言葉がうまく通じなかったからだ。
 処置開始。点滴ライン確保。痛くないかと何度も問いかけると「大丈夫」を繰り返す。左手にはすでに包帯が巻かれており、切断された指も氷で冷やされていた。現場ではあえて包帯を取って傷を観察せずに、搬送することにした。この判断が後に大きな問題となった。
17:15
ドクターヘリ内に傷病者を搬入。
17:18
 佐久総合病院に向け離陸。
17:27
 佐久総合病院 到着。 
 川上村での事案⇒佐久総合病院への搬送、という流れで搬送したが、このとき、当院形成外科医師は前回ドクターヘリで搬送した患者さんの手術中であり、本事案の切断指には対応ができない状況だった。事前の連絡と確認が不十分であった。
 切断指に対応できる他の病院を探すことにした。その間、救急外来でできる限りの処置を行った。指は再接着可能な状態だった。
18:23
 ようやく搬送先が決定。松本市の信州大学付属病院に向け出動。
18:40
 信州大学付属病院救急部医師とのランデブーポイントに到着。信大付属病院医師に引き継いだ・・。
18:44
 日没ギリギリのため、急いで佐久総合病院に向け離陸した。・・私たちの気分は夕日よりも沈んでいた。本日のスタンバイ、ようやく終了。
 ドクターヘリの運航は、数多くの人たちが協働することによって成り立っている。傷病者にとっての最善の治療ができる医療機関に搬送することが、ドクターヘリの役割である。その中のスタッフであることの責任は大きい。患者さんにとって最良の流れをつくるために、一人でも多くの患者さんを救うために今後も努力していこうと思う。
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