水虫は白癬菌というカビが原因で起こる皮膚の感染症です。水虫というと足が真っ先に思い浮かびますが、爪白癬(爪水虫)、頭部浅在性白癬(シラクモ)、体部白癬(タムシ)、股部白癬(インキンタムシ)、手白癬(手水虫)といったように様々な場所に感染し、感染した場所によって病名が異なります。今回は足白癬(足水虫)と爪白癬(爪水虫)について、病態、治療薬、日常生活での注意などについて述べたいと思います。ちなみに足白癬の患者数は約2000万人、爪白癬を併発している患者数は約800万人、爪白癬のみの患者数は約300万人といわれています。


足水虫:足水虫は、次の3つのタイプに分けられます。それぞれ症状も異なります。
(1)趾間びらん型
足の指、特に第4−第5趾間(薬指と小指の間)にできやすく、むずがゆい感じを伴う最も多いタイプ。趾間に鱗屑(かさかさ)を生じ、やがて白くふやけ、皮がはがれるとびらん面となり湿潤します。このタイプはしばしば夏に細菌の二次感染をきたし、痛みを伴う場合もあります。

(2)小水疱型
初夏〜梅雨時に症状が出現したり増悪することが多く、秋口〜冬には改善する傾向があるのがこのタイプ。足の裏やふちに小さな水疱ができ、非常にかゆくなります。

(3)角質増殖型
足の裏全体、特にかかとの皮膚がかたく、分厚くなり、皮がむけてくるタイプ。1年中を通してあまり変化しませんが、冬になると角質の乾燥が増強し、亀裂(ひび、あかぎれ)を生じ、痛みを伴う場合もあります。かゆみはあまりありません。このタイプは水虫の慢性型ともいえ、爪水虫を合併している例もまれではありません。このタイプの水虫は塗り薬の効果があまりないため、飲み薬の併用が必要です。

爪水虫:爪水虫は白癬菌が爪の中に入り込んでおこります。足水虫を放置したためにおこることがほとんどです。親指の爪によくおこり、爪が白〜黄白色に濁ったり、分厚くなったり、もろくなったりします。爪には知覚神経がないため自覚症状はありませんが、症状が進むと歩行時に痛みをみとめることがあります。



 足水虫の治療は原則として外用抗真菌薬というカビを殺す塗り薬が第一選択となります。爪水虫については飲み薬が第一選択となります。理由は塗り薬では爪の中まで有効成分が届きにくいからです。飲み薬だと、有効成分が効果的に爪に届くので、塗り薬の場合と比べ、治療期間がかなり短くなります。


一  般  名 商  品  名 一日に
塗布する回数
クロトリマゾール
エンペシドクリーム
数 回
硝酸ミコナゾール
フロリード D
数 回
硝酸イソコナゾール
アデスタンクリーム
数 回
ケトコナゾール
ニゾラールクリーム
1 回
ビホナゾール
マイコスポール液
1 回

マイコスポールクリーム
ラノコナゾール
アスタット 軟膏
1 回

アスタットクリーム

アスタット 液
塩酸テルビナフィン
ラミシールクリーム
1 回

 今までの塗り薬は、1日に数回塗らなければなりませんでしたが、最近では、1日に1回ですむものも増えてきました。塗り薬をつける期間はどの位か?という質問はよくありますが、再発を予防するために症状がよくなっても3ケ月〜6ケ月位はつける必要があります。
塗り薬には軟膏、クリーム、液というように、色々な剤形があり、それぞれに特徴があり
ます。
軟膏は低刺激なため、ほとんどの病変に使用することができます。びらんやじくじくにも使えます。べたつきがあるため使用感はあまりよくありません。
クリームは刺激があるため、びらんには使えないため、乾燥病変に使われます。軟膏と比べ、べたつきが少なく、使用感はよいので、特に夏場は好んで使われます。
液も使用感はよいが、刺激が強いため、おもに乾燥病変に使われます。また、飲み薬での治療ができない患者さんにも有効です。

一  般  名 商  品  名
イトラコナゾール
イトリゾール
塩酸テルビナフィン
ラミシール

 イトリゾールについては、副作用で肝機能障害があったり、相互作用(一緒に飲むと予期せぬ副作用がでたり、薬の作用が強まったり、弱まったりすること)を起こす薬が多いため次に示すようなメーカー作成の説明書をつけています。また、定期的な血液検査を行うことが義務付けられています。他に服用中の薬がある方は医師、または薬剤師に必ず伝えるようにしてください。下に併用禁忌の薬(併用してはいけない薬)の表を示します。併用注意の薬(併用に注意する薬)については、非常にたくさんあるため、気になる方はご相談ください。




スイッチOTC:通常、新しく開発された成分の薬は医療用医薬品(病院で使われる薬)としての使用経験を経てからOTC薬(薬局で買える薬)に転用(スイッチ)されます。これをスイッチOTCといいます。最近、テレビのコマーシャルで医療用成分の薬が薬局で買えるというような言葉がよくきかれますが、それがこのスイッチOTCのことです。医療用医薬品と同じ成分のスイッチOTCの主なものを次の表に示します。



 爪水虫の治療薬のところで示したイトリゾールという薬を通常より多い量で1週間内服し、3週間休薬する。これを3回繰り返す方法がイトリゾールのパルス療法で、すでに欧米では広く行われている治療法です。服薬期間は21日、治療期間は3ヵ月で高い有効性と安全性が実現されており、患者さんからも高い支持を得ています。メーカー作成の説明書と、治療効果の写真を示しますので参考にしてください。



清潔を心がける。(毎日入浴し、石鹸でよく洗う)
洗ったあとは水分をしっかりふき取り、しっかり乾燥させる。
バスマット、タオル、スリッパなどを共用しない。(洗濯物からうつることはありません)
通気性のよい靴下、靴を履く。靴を履く時間をできるだけ短くする。



水虫と自己判断している患者さんの約40%が水虫ではないといわれています。表で示したように今は薬局で簡単に医療用と同じ成分の薬を買うことができます。しかし、それが水虫ではなかった場合、水虫薬をつけても治らないのは当たり前ですし、逆に症状が悪化する場合もあります。正しい治療をするためには、皮膚科専門医による診断が必要です。自己判断で薬をつけているけどなかなかよくならない人、今年こそしっかり治そうと思っている人、皮膚科を受診してみてはいかがでしょう?皮膚科を受診する際、水虫の薬をつけていると診断できないことがありますので、受診する1週間程前には塗り薬を中止しておきましょう。また、ご家族の中に、同じ水虫を持った人がいると、せっかく治療しても再発してしまいますので家族全員で水虫の治療をするようにしましょう。



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