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 今回、抗血栓割について取り上げる予定でしたが、急きょ、これからの季節注意しなければならないインフルエンザについて取り上げることにしました。前回のテーマの「インフルエンザ脳症と解熱剤」とも関連していますので合わせてお読みください。


 日本ではインフルエンザは12〜3月に流行します。これは、乾燥した冷たい空気で私たちの鼻やのどの粘膜が弱るため、ウイルスに感染しやすくなるからです。次にインフルエンザウイルスは温度が低く、乾燥した冬の方が、長期間感染力を維持できることが挙げられます。また、冬は大勢が室内に集まったり、換気が悪くなりウイルスが充満しがちになることが原因と考えられています。


 普通のかぜの原因の90%はライノウイルス、アデノウイルスなどのウイルスです。症状は、鼻水、咳、くしやみなどが中心で、発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはあまりありません。
 一方、インフルエンザの場合は39℃以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く、あわせて普通のかぜと同様の、のどの病み、鼻汁などの症状も見られます。全体の症状が治まるまでに約1週間、完治するまでには1〜2週間ほどかかります。インフルエンザは流行が始まると、短期間に多くの人を巻き込むという点でも普通のかぜとは異なります。乳幼児や高齢者などは重症化しやすく、死亡することもあります。



 1〜5歳の小児を中心に発生し、いったんおこると後立症を残したり、致死率の高い合併症です。一部の解熱剤ではインフルエンザ脳症のリスクを高めるのではないかと考えられています。辞しくは前回の特集をお読み下さい。


(1)外出後は手洗い、うがいする
 手洗いは接触による感染を、うがいはのどの乾燥を防ぎます。
(2)人ごみへの外出を避ける
 ウイルスとの接触を避けることができます。
(3)マスクを着用する
 鼻やのどの乾燥を防ぎます。鼻まで覆う大きなマスクを着用しましょう。
(4)適度な湿度を保つ
 ウイルスは低温、低湿を好みます。加湿器などで室内の適度な湿度を保ったり、こまめな換気を心がけましょう。
(5)十分な栄養と休養と、適度な運動を
 体力をつけ、抵抗力を高めることで感染しにくくなります。
(6)インフルエンザに関してはワクチンの接種を受ける
 ワクチンの接種により発症を予防できます。予防効果は100%ではありません(インフルエンザウイルスの性質が少しずつ変化していくためです)が、かかっても症状が軽くて済みます。ワクチンは接種しても、その効果が現れるまで約2週間程度かかるので、遅くとも12月中旬までには受けておきましょう。年によっては流行が早まることもあるので、早めに受けておくと安心です。



(1)単なるかぜと軽く考えずに、早めに医療機関を受珍しましょう。(インフルエンザに対するお薬は発病してから48時間以内に使用しないと効果がありません。また、乳幼児や高齢者は重症化することもあります)
(2)安静にして、休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。
(3)加湿器などで室内の適度な湿度を保ったり、こまめな換気を心がけましょう。
(4)水分を十分に補給しましょう。


 インフルエンザにかかることにより、他の細菌にも感染しやすくなります。このような細菌の混合感染による肺炎、気管支炎などの合併症に対する治療として抗生物質が使用されることがありますが、抗生物質はインフルエンザウイルスには効きませんので、自己判断で以前に病院などでもらった抗生物質を飲むことはしないでください。また、いわゆる「かぜ薬」と言われるものは、発熱や鼻汁、鼻づまりなどの症状をやわらげることはできますが、インフルエンザウイルスや細菌に直接効くものではありません。インフルエンザに効くお薬にはザナミビル(リレンザ)、オセルタミビル(タミフル)があります。

ザナミビル(リレンザ)、オセルタミビル(タミフル)

(リレンザ)

(タミフル)
 ノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれる治療薬です。細胞内で増えたウイルスが細胞から離れて広がるのを防ぎます。治癒が約1日早くなります。A型、B型いずれのインフルエンザにも有効で、耐性ウイルスができにくい、副作用が少ないというメリットがあります。吸入タイプのザナミビル(リレンザ)は、1日2回の吸入を5日間行います。説明書をよく読み、正しく使用するようにしてください。きちんと吸入しないと効果がでません。オセルタミビル(タミフル)は内服タイプのお薬です。
 いずれのお薬もインフルエンザの症状を軽減し回復を早めますが、発症してから48時間以内に使用を開始しないと効果がありませんので、「インフルエンザかな?」と思ったらすぐに医療機関を受珍しましょう。



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