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 インフルエンザ経過中に高熱、痙攣、意識障害などを伴う重い合併症で、5歳以下の小児に多く、脳症になってしまった場合、約1/3は死亡するという極めて致死率の高い疾患です。たいていの場合発症してから脳炎、脳症となるまでの期間は短く(平均1.4日)、インフルエンザが長引いてこじれるというわけではありません。発症のメカニズムなどはほとんどわかっておらず厚生労働省で現在も研究されているようです。


 一番の予防法はインフルエンザに罹らないことです。そういう意味ではインフルエンザの流行する季節になったらワクチンの接種を行うことが効果的といえます。ワクチンは万能ではありませんが、ここでは有効性について述べるのは控えさせていただきます。また運悪くインフルエンザにかかってしまった(あるいはかかったと思われる)場合、現在は抗インフルエンザウィルス薬が発売されているので、医療機関にかかって投薬を受けるのもひとつの方法です。しかし発症後36時間や48時間以内に開始するという条件がつく場合がありますのでご注意ください。発症してしまった場合の確立された治療法はないのが現状で、脳浮腫に対する治療などが主体となっています。


 インフルエンザによる高熱に対し一部の解熱剤を使用した場合、インフルエンザ脳症の発症のリスクを高めるのではないかという問題が出てきています。因果関係については今後も引き続き検討する必要はありますが、少なくとも現時点ではジクロフェナク(商品名:ボルタレン)、メフェナム酸(商品名:ポンタール)の2剤については使用を控えるべきです。


 解熱剤の中ではアセトアミノフェンが比較的安全で、小児のインフルエンザに用いても良いのではないかという意見が多く出てきています。日本小児科学会でも、インフルエンザによる小児の発熱に解熱剤を使用するには、アセトアミノフェンが最も適切との見解を発表しています。


 手術目的で入院された場合には、ジクロフェナク(商品名:ボルタレン)を処方された方が多いと思いますが、この残薬をインフルエンザが疑われるときに使用することは止めてください。

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