佐久総合病院ニュースアーカイブス  






 やちほの家では、畑作りに挑戦している。もちろん利用者家族の手と知恵を借りての、初心者用家庭菜園である。
 4月に入って、陽気が良くなると、土手には黄色のタンポポがびっしり。畑には道まで延びた、ブルーの小花をつけたはこべが、威勢良く伸びていた。昨年の秋、しっかり種をまき散らしてくれた雑草を退治するには、ひと雨ごとの根気の良い草むしりが必要である。送迎の合間に、看護学生や医学生に手を借り、午前中の短時間、利用者と一緒に作業をする。「西洋タンポポ・ごんべい・コンフィル」は、さすがにしつこい。
 方々からいただいた多くの花が土手に植えられた。熟成した牛糞を蒔いた畑には、各種の野菜の苗や種が蒔かれた。連休明けには例年遅霜がくる。苗物は小満祭開けでないとダメだという。今年は雨が降らず野菜が根付くまで、根気のいる水やりが必要だった。ジョウロでの水やりは利用者の日課になったが、半端な量ではなかった。 高台に流れている大庭用水から、水を引けるようになり、毎朝用水路へホースを入れ、水圧をかけてくる作業ができた。「ヘビに合いませんように」「毛虫が肩に落ちませんように」とハラハラである。だが、決まってイヤだと言っている職員の勤務の日に現れる。おまけに、シカの目ともかち合ったというから、よほど運がいい。
 農薬を使わないせいか、ミミズも太くて長い。石の多い畑はマメトラで起こしにくい。何回も利用者のご家族が自分の家のように耕やしてくれた。初収穫は春菊とほうれん草。摘んだ所から次々に出る春菊と同様に、ほうれん草も同じように1本ずつ摘んできた。「へぇ。ほうれん草は根から採るんですか。勉強になります」と職員。
 蜘蛛もでかい。でかい蜘蛛の巣も見事だ。木と木の間に大きく糸を張り巡らせて、獲物を待っている。夜見ると一段と大きく見える。玄関の薄暗い明かりに、張られた蜘蛛の糸が気になって、ほうきで払おうとした職員の手に大きな蜘蛛が突然落ちてきた。「ぎゃぁー」「痛〜い」その翌日、一方の肩が白帯で固定されていた。
 今年は蜂が多かった。昔からやちほの家には、スズメバチが何回も巣作りをしてきたという。確かに2階の西の軒下に空のスズメバチの巣がそのまま吊さっている。この頃、2階の北側に新しい巣を発見した。早速駆除をお願いすると、夜、宇宙服の様相で来たおじさんが、直径20センチもの巣をすばやく採っていった。2万円が相場だというが、確かにあの容姿を見れば命がけだ。
 秋雨前線の中日に日がさした。何処でも、秋のおてんまの草刈りで、目に入る景色が広がっている。やちほの家にも、長い長いお客がやってきた。その日は、ネズミを捕ってくれる屋敷ヘビ様のアオダイショウの話で盛り上がった。