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 “ウゥーー! ウゥー! ウゥー!”騒々しいサイレンとともに消防車・救急車が現れ、瞬く間に隊員が校庭に散水し、『ドクターヘリがまもなく飛来します! ドクターヘリがまもなく飛来します! 生徒の皆さんは校舎に避難してください!』のアナウンスが流れ、静かな校庭・学校を一瞬にして、救急活動の現場へと一変させる。
 授業の最中にもかかわらず、ケタタマしい騒音と砂塵を巻き起こし、校庭に着陸するドクターヘリ、このような風景をご覧になられた生徒さん先生もいらっしゃることでしょう。あるいは公園等で、同様の風景に居合わせた方々もいらっしゃるでしょうか。
 そんなヘリから颯爽と降り立つフライトドクターとフライトナース そう、そんな一刻を争う患者様の待つ場所へ医療スタッフを運ぶために、ドクターヘリがあり、そのヘリコプターを飛ばすための運航クルーがいます。

 私は現在、運航クルーの中で整備士として、ドクターヘリに関わっています。運航クルーは3名1組のチームとして日々のドクターヘリを運航しています。旧号にて前出済みのCS(コミュニケーションスペシャリスト)は運航に関わる関係機関との調整、操縦士はヘリの操縦を担当と・・・。では整備士は普段何をしているのでしょう?
 普段私たちは消防からの要請により飛行しますが、それまでは平穏な空気が待機室では流れています。しかし、『ドクターヘリ・エンジンスタート! ドクターヘリ・エンジンスタート!』と病院用携帯の着メロ(残念ながらこの着メロは非売品のためダウンロードできません・・)が鳴り響くと、至急運航クルーは離陸準備をして、3分後には病院を離陸して現場へ向かっています。
 ここで整備士は機体に搭乗し、飛行中は操縦士の航法補助、出動先の学校校庭等の救急活動現場では、患者様をストレッチャー(担架)に移し変え、機体への搬入および搬送先病院での搬出をします。もうお気づきかと思いますが、そうです、実は出動中の整備士の役目は、整備作業ではなく運航サポートなのです。
 じゃー、整備士なんて要らないのでは・・・、なぁーんてなるのですが・・、大抵のヘリコプターは『1日の初めと終わりには整備士が機体の診察をしなさい!』となっているため、なんとかこの業務に就かせてもらっています。
 ヘリコプターも車と同様に機械の塊ですが、実は時々風邪等の疾患を患います。そういった病気にならないように、日夜整備士は愛情たっぷり? の厳しい目で、ヘリコプターを診察し、精一杯かわいがってあげ健康状態を管理し維持しています。ただ、それでもへそを曲げ、病気になったときには、ドクターヘリの運航時間に影響が出ないように、最善の努力を尽くして機体を飛行可能状態の健康体へと、整備士が緊急手術を実施します。これは症状により時間はまちまちで夜を徹して実施することも稀にあります。まぁ、これが本業です・か・ね。
 先日痛ましい事件が東京・秋葉原にて発生しました。亡くなられた方々、関係者にお悔やみ申し上げます。テレビでの事件発生直後の映像からは、被害者が凄惨な事態から抜け出せるように、懸命に救命活動をされている市民の方々が映し出されていました。当該事件には近隣県で運航するドクターヘリは出動することはありませんでしたが、そこに映し出されている方々の気持ちは、紛れまもなく私たちと変わるものでなく「今そこにある命を救う!!!」であったことでしょう。
 佐久病院にて運航されています『信州ドクターヘリ』もこの気持ちでがんばっています。
 運航開始後、この7月をもちまして丸3年が経過しようとしています。これまで無事故で運航できていることは、これもひとえに長野県民皆様をはじめとする、多くの関係者のサポートにより成し遂げられていることを、この場をお借りしヘリコプター運航会社として改めて感謝いたします。
 さて、これを手にされ、お読みになられている場所はどこでしょうか?
 晴れ渡る空の下の公園? 病院の待合室? 家族の団欒中? 仕事サボッてトイレの中? もしかすると、いまこの近くに騒々しいサイレンとともに、ドクターヘリが現れるかもしれません。
 これからも皆様の緊急・救急医療の補助となれるよう鋭意努力してまいります。この後、あなたに現場でお会いするときは、公園でお休みになっている方々? 消防署員、団員? 医療クルー? それとも同じ運航クルー? でしょうか? 患者様として私と現場でお会いするのはまだまだですよ!
信州ドクターヘリを今後ともよろしくお願いいたします。


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