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5月某日8:00
 運航前点検開始「今日は飯田あたりに行きそうだな」などと話しながら。
【解説】
 毎朝、運航開始前にヘリ内物品の定数、機器の作動確認を行っている。
点検後、機長・整備士・医師・看護師でブリーフィング。主に、天候や一日の予定、安全確認などを行う。
8:26
 携帯しているPHSから無機質な声で、「ドクターヘリ・エンジンスタート」とスタートコールが鳴り響く。
【解説】
 フライトクルー全員がPHSを持っており、通信センターに出動要請が入ると運航管理者(CS:コミュニケーションスペシャリスト)がPHSに一斉コールをかける。そのコールが鳴ると同時にヘリポート目指してダッシュする。要請から出動まで2分を目標としている。
8:28
 佐久病院離陸。通信センターから無線を介して患者情報が入る。「大鹿村で、85歳女性JCS300・・・」一瞬機内は静まりかえるが、その静けさでグッと気持ちが引き締まる。と同時にシミュレーションスタート!患者の状態を予測しながら、現場での動きをフライトドクターと共に考える。点滴ライン・薬剤・気管挿管などの準備を開始。最悪の状態を考え準備をするが、それでも到着までまだまだ時間がかかる。眼を閉じ集中する。
8:56
 ランデブーポイント(救急隊と落ち合う場所)到着。 救急車内の患者さんと接触。JCS200、 瞳孔6.0/3.0と不同有、今にも止まりそうな呼吸。点滴ラインを確保し、気管挿管実施。緊迫した状況の中、我々の脇で腕を組んでいるだけの診療所の医師がいる・・・。 
 そしてその横には、母親が急に倒れたことに動揺する息子さんがいる。できる限りの説明をし、気持ちを落ち着かせる。患者さんの状態を考え、息子さんに同乗してもらうことにした。
【解説】
 ドクターヘリには運航スタッフ含め、6名の搭乗が可能。状況によっては患者さん2名の搬送が可能ということになる。これまでも患者さん2名の搬送を数回経験している。
9:15
 ドクターヘリ内に患者さんを搬入。
9:20
 飯田市立病院に向け離陸。バッグ・バルブ・マスク(BVM)換気しながら、バイタルサインに注意しながら、息子さんにも声を掛けながら、病院に向かう。
9:28
 飯田市立病院到着。 救急外来にて引継ぎ。 ようやくミッション終了。その後、松本空港に立ち寄り給油を行い、佐久病院に帰還する。すでに時刻は、10:30を過ぎている。
 ICUスタッフが「お疲れ様」と声を掛けてくれる。仲間のもとに帰ってくると安心する。記録・事務処理・物品の補充を行い、ようやく本当にミッション終了!
 病棟業務(主には看護師のフリー業務)を少し行い、次の出動に備えとりあえず腹ごしらえ。食事を終え歯磨きをしていると…「ドクターヘリエンジンスタート」のコールが再度鳴り響く。
13:15
 ドクターヘリ要請。
13:18
 離陸。通信センターから患者情報が入る「89歳男性、食事後歩行困難…」。
 川上村に向け出動。いつものようにシミュレーション開始!点滴ライン・薬剤の準備。比較的近い場所なのでしっかりと気を引き締める!
13:28
 ランデブーポイントに到着。2分ほど救急車を待つ。
13:30
 救急車内の患者さんと接触。JCS20〜「また頭か…」などと思いながら、注意して観察実施。瞳孔不同なし。四肢麻痺なし。発語なし…点滴ライン確保。一通りの観察実施。患者さんの状態を考え、息子さんに同乗してもらうことにした。
13:43
 ドクターヘリ内に患者さんを搬入。
13:45
 佐久病院に向け離陸。意識状態の変化に注意しながら、息子さんに説明しながら…。
13:56
 佐久病院救急外来到着。引継ぎと記録・事務処理・物品補充を行いミッション終了。
 …「今日はもう要請はないかな」などと思いながら、ICU業務に戻る。ICUに戻ってくると本当に安心する。現場では看護師は自分一人だけ、その責任は大きい(現場では医師よりもやることが多い)。だからこそ救急隊や警察との連携は非常に大切となる。だからこそ日々自分を磨いていかなくてはならない。2年が過ぎ、ようやく石に付いた泥を落とせた程度だろうか…。
 水分の補給をし、しばしの休憩をしていると・・・ (後編に続く


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